人々は「そんな頃にはオレは生きていないさ」と言って吠笑のタネにする状態。
日本政府も、温暖化現象そのものをまったく信じていない様子だった。
政府が変わったのは、気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)が1997年に京都で行われ、「京都議定書」を議決することになって以来だ。
それまで日本は、二酸化炭素を莫大に放出する石炭火力発電所の増設計画を進めていた。
ところが、京都議定書締結の直後に、政府は突然それまでの方針を変換し、石炭火力発電所の建設にストップをかけたのだった。
日本人には「同質性依存」の心理がある。
皆が同意しなければ、自分の意見を持つことができないのだ。
京都会議で「世界の人々、各国政府首脳は本気で温暖化対策をやろうとしている」ことを初めて感じて、日本政府はやっと「温暖化の恐怖は、本当のことなんだ」と気づき始めたのだろう。
地球温暖化問題は「やっぱり本当のことだった」と気づいた時点で対策をしても遅すぎる。
以下に詳しく述べるように、もうそのときは手遅れになっているだろう。
本気で、ぶれない確信を持って行動する人が増えれば、同質性依存の人たちは動かざるをえなくなる。
この本の目的は、そう思う人が一人でも増えることにある。
日本では、なかなか世界で流れている情報が伝えられない。
他国に出かける人は多いのだが、そうした現実を見ようとする人は多くない。
既に地球温暖化の被害に遭っている人たちは真剣に訴えているというのに、日本ではまだ多くの人が背を向けるようにして「大げさな。
あんなのは本当の話じゃないさ」と、仲間うちでゴツゴツ話し合っている。
1989年の会議で、アメリカのNGO代表は、最初通訳の誤訳かと思って困惑していた。
しかし日本のNGOメンバーが本気で地球温暖化を否定していることに気づいて、彼は憤った。
彼はたくさんのデータと事例を挙げて反論したのだが、日本人の側は「同質性依存症」の中に隠れ、冷笑しているように見えた。
現実に温暖化の被害に遭っている人たちがいる。
それだけでも動き出すべきではないか。
この悪循環を好循環に変えてみよう。
そのためには、たった一人でも、孤独な中でも確信を持つことのできる人が必要だ。
同質性依存を乗り越えて動くことのできる人が生まれることが、この社会の方向性を決めるだろう。
地球温暖化の問題を調べていて、ぞっとするのが「間に合うのかどうか」という話です。
イギリスの『インディペンデント』紙など外国のマスコミでは、「間に合わないかもしれない、間に合うとしたらいつまでか」という論議がさかんに行われています。
その理由は「ポジティブ・フィードバック」という、悪循環が始まりかけていることがわかったからです。
簡単に言うと「雪だるま式」という現象です。
雪球が転がり落ちると、どんどん雪球が大きくなって坂を転げ落ちていくという状態。
あるいは坂を転げ始めた乳母車のような感じでしょうか。
もし、一つのきっかけが次の温暖化を招き、その事態がさらに温暖化を加速させるとしたら、もはや人間にはどうすることもできなくなってしまいます。
あとは自動的に転げ落ちる事態を見ているしかない。
だから、「どんな形でそれが起きるのか、私たちに残されているのはあと何年なのか」と考えざるをえないわけです。
それはちょうど、サッカーの試合で後半45分か終わったあとのロスタイムに似ています。
いつ終了のホイッスルが鳴るかわからない。
このパラパラする、わずかな時間だけが私たちに残された時間なのではないかと思うからです。
2007年2月、「気候変動に関する政府間パネル」(1PCC)が、地球温暖化に関する「第4次報告」を発表したのですが、それが非常に衝撃的な内容でした。
この1PCCは、全世界で300人の気候変動を研究する科学者と、他分野の専門家を含めて千人以上が集まって、国連に直接属する形で調査・発表している団体です。
特定の組織や国家から活動資金を受け取って調査するというような団体ではないですから、非常に中立性が高く、信頼性が極め工局いと認められているのです。
慎重に言葉を選ぶ科学者たちの集まりですから、「可能性がある」とは言っても、断言することはめったにありません。
しかし今回の報告では、非常に自信を持って、驚くべき内容を発表しました。
上昇、雪氷の広範囲にわたる融解、溶解、世界平均海面水位の上昇が観測されていることから、いまや明白である」と。
1PCCはこれまで、地球温暖化について「人為的な原因の可能性が高い」というような表現をしていましたが、今回は「疑う余地がない」に変わりました。
つまり、1PCCの報告は、「これはもう絶対確実だ」と言い切ったということになります。
科学者によるこのような表現は非常に珍しいことなんです。
なぜそこまで断言できたのかというと、地球を暖める温室効果ガスや、逆に寒冷化させる火山から出るちりなどを計算して、ずっとシミュレーションしてきたからです。
例えば、火山が爆発すると、ちり状になった物質やガスがいっぱい飛びます。
そのちり状になって飛んだものは、太陽光を反射するので地球を涼しくします。
だから、火山が爆発すると涼しくなる。
日本でも大飢饉の前というのは、だいたいどこかで火山が爆発していたんです。
だから「温暖化なんてものは太陽や宇宙の熱の周期だ」「火山のちりが減ったせいだ」とか、いろんなことを言われてきたわけだけれども、そうではない。
これはもう「温暖化は、明らかに人間が作ってしまったことだ」と、今回の報告書の中で立証し、自信を持って報告したわけです。
ところが現在、日本では「温暖化の危機」に異議を唱える本がよく売れているようです。
面白いことに、ほぼ地球温暖化を否定したい人の心理状態を反映していますね。
すべての種類の疑問が出揃っているように感じます。
まず、「そもそも温暖化は起きていない」とする説ですが、もともと地球温暖化防止の条約を「気候変動枠組み条約」と呼ぶように、そうした個別の地域の寒冷化などは織り込み済みの話です。
たとえばヨーロッパでは、「熱塩大循環」という海流が停止してしまうのではないかという話が問題になっています。
北極近くの海が凍るとき、塩分は氷に含まれないために周囲の海水の塩分濃度が上がり、さらに冷やされることで海水が重くなって海底に沈んでいきます。
これが動力源になって、グリーンランド沖から大西洋を南極まで下り、そこからインド洋・太平洋など海洋全体の深海に海流を起こす流れを作ります。
これを「熱塩大循環」と呼んでいます。
ところが温暖化すると海水が重くならないので、この力が弱まります。
すると北海に向かって流れ込んでいた暖流が弱まるため、ヨーロッパは寒冷化すると見られているのです。
つまり、温暖化はただ暖まるだけではありません。
気候が変動するのです。
カタカタと、まるで壊れかけたエンジンのように。
また、「二酸化炭素などより太陽活動や水蒸気の方が影響が大きい」とするのには無理があります。
まず太陽活動ですが、これは地質年代レベルの尺度の話です。
ですからここ100〜200年というような短期的な話ではありません。
まったく偶然に同時期に重なったという考え方もできなくはないですが、その確率は極めて低いでしょう。
水蒸気が温室効果を持つことは織り込み済みです。
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